第十四章  「過去の記憶」





ここはルーインと呼ばれる街。
外界とは一切の関係を断ち、ひっそりと人間が暮らしている街。
既にこの世には無い街。
今、存在しているのはトンガリの記憶の中の姿である。
トンガリ:「ルーイン!?確かに僕はバルチャ―と戦っていたはず・・・」
ルーインは僕の故郷。平和な街だったがあの事件で滅んだはずだ。
どうしてここにルーインが・・・
あ、あそこに居るのは僕!!!?
幼きトンガリ:「父さん、行ってらっしゃい」
トンガリの父:「あぁ、行ってくる。街の人をしっかり守ってやるんだぞ」
幼きトンガリ:「うんっ!」
これは僕のあの日の記憶・・・・。そんなバカな!!?
夢・・・夢なのか?
街人A:「本当にリガールさんはいい人だよな〜」
街人B:「そうだな、街を守ってくれてるのに俺達から一銭も金取らないし。あの人が居てくれてなきゃ今頃この街はないよ」
リガール、僕の父さん。父さんはこの世界でも有数の剣の使い手だ。
この街には魔物が襲ってくる事が多かったが、父さんがこの街の用心棒を始めてから魔物が街を襲ってくる事は少なくなった。
そんな父さんを街の人達は尊敬している。
街の人達から尊敬されている父さんは僕の誇りだった。
しかし、その平和も終わりを迎える時は来る。
あの日、父さんは国の依頼で魔物退治にいっていた。
父さんはすぐに戻ってくると言っていたが一週間過ぎても戻ってこなかった。
幼きトンガリ:「父さん今日も返って来ないのかな〜・・・」
僕は一人、家で父さんの帰りを待っていた、だが待ち疲れて眠ってしまった・・・
目を覚ました僕に信じられない光景が飛び込んできた、街が炎に包まれていたのだ。
幼きトンガリ:「か、火事!!?早く皆に伝えなきゃ!!!」
僕は急いで家を飛び出し町長の家へと向かった。
幼きトンガリ:「ち、町長さん火事・・・・・」
町長の家から出てきたのは町長ではなく、黒いマントを羽織った男だった。
男:「町長は殺した。ついでにこの街の奴等も全てな・・・・」
男からは尋常でない殺気が溢れている。僕は恐怖で動くことができなかった。
幼きトンガリ:「あ、あわわ・・・」
恐怖で動くことができない僕に男は尋ねてきた。
男:「リガールはいないのか?」
僕は恐怖を押し退けながら喋った。
幼きトンガリ:「と、父さんは今強い魔物と戦いにいっているんだ。父さんが帰ってきたらお前なんか簡単に倒しちゃうぞ!!!!」
男は僕の言葉に驚いたようだった。
男:「父さん・・・?リガールの息子か!!!?」
男が僕に詰め寄ってくる。僕には男の言葉なんか街の人を殺された怒りで聞こえていない。
幼きトンガリ:「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
僕は地面に落ちていた剣を拾い上げ男に飛び掛った。
しかし、僕の一撃はあっけなく避けられ、かわりに腹に一撃を喰らう事になる。
僕は数十メートル後ろへ吹き飛ばされ木に激突した。
幼きトンガリ:「ち、畜生・・・・・。な、何でこんなことを・・・・」
男:「リガールの存在は我らの計画の邪魔だ。我等が首領は奴を仲間にできないかと言った。もし奴を我等の仲間にできれば計画は確実に成功する。しかし断った場合は殺してこいと言われたのでな。それを実行したまでだ・・・」
男はいかにも邪悪そうに言った。僕が今までに聞いた声の中で一番冷たい雰囲気を持っている。
僕は再度男に飛びかかろうとしたが、体が動かない。
男:「無駄だ。俺の術中からは逃れられない。」
怒りで何も考えられない。自分の無力さが嫌になった。
街を破壊したコイツを許せない・・・
幼きトンガリ:「う、うぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
僕の中で何かが弾けた。
男:「そ、そんな馬鹿な!?俺の術がこんなガキなどに・・・」
術中から逃れたことに驚いている男に僕は殴りかかった!!!!!
僕の拳は男の顔面に命中し男は吹っ飛んだ。
男:「ぐ、ぐは・・・・ガ、ガキにこんな力があるはず・・・・!?ちっ、ここは引こう。ガキ、このハーデスから逃げられると思うなよ!!!!」
男はそう言い残し霧のように消えた。
や、やった・・・・、父さんやったよ。
でも街が壊れっちゃったよ、街の人も死んじゃったよ。
これからどうすればいいのかな僕。父さん・・・
僕の意識はそこで途絶えている・・・



第十五章へと続く・・・



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