第三十章  「勝利後の・・・」





その女はゆっくりと僕のほうに歩いてきた。急に歩くのを止め片膝をつき始めた。
女:「イタタ・・・・、やっぱり格闘術なんて使えないですねぇ・・・」
トンガリ:「はっ?」
思わず不明の意味を込めて声を出してしまったのだが彼女は聞こえなかったようだ。
構わずに続けてくる。
女:「えと大丈夫でしたかぁ?かなり辛そうですけどぉ・・・?」
急に現れて何言い出すんだかと思えば・・・・まぁ当たり前のことなんだろうけど。
トンガリ:「あ、あぁ。え〜と、さっきは助かりました。どうも。」
即座に彼女が返答してくる。
女:「いえいえ〜。あなたがあの蜘蛛に傷を負わせていたから私なんかの格闘技で勝てたんですよ〜。」
僕があの大蜘蛛に奥義を喰らわしていたといっても、あれは相当の強度だった。
それを足・・・かな。蹴りで簡単に倒せるとは思わないけどな・・・。
何かこの人、常人とテンポがずれてるっていうか・・・な。
女:「私チェリケーっていいますっ。えとよろしくです♪」
トンガリ:「え・・・と、こちらこそ」
二人の会話に反応したのか、気絶していたシャウトが、後ろから問い掛けてきた。
シャウト:「ふぁぁぁ・・・。んっ?その娘さんは誰だ?」
寝起き(やっぱり寝ていた)らしく欠伸雑じりに、ごく自然な質問をしてくる。
僕がその質問に答えようとしたが・・・
チェリケー:「はいっ!チェリケーといいますっ!」
さすがのシャウトも少し疲れたような顔をする。テンポがずれている人間と話す時は疲れるものだ。
シャウト:「おぅ、シャウトだ。」
チェリケー:「シャウトさんですかぁ〜。よろしくですぅ〜。」
シャウトと僕。二人で嘆息した。シャウトが目で語りかけてくる。
シャウト:「(さっさとギルロイ探すんだから、この女を適当に追い払って・・・)」
トンガリ:「(だな。僕が話しを適当に流すからその隙に奥へいくぞ)」
彼が親指を立てて同意をジェスチャーを表す。それを見てから僕は彼女、チェリケーに向き合った。
こちらに気付いたのか、顔をかしげて言ってきた。 チェリケー:「なんですかぁ〜?」
トンガリ:「僕ら先急ぐんで・・・では。」
洞窟の奥へと向かう。早くギルロイを見つけないと救護に間に合わないかも知れない。
彼女の視線を後ろに感じたが無視して横を通り過ぎる。後ろを見るとシャウトもついて来ている。
それを確認し振り返った瞬間、視界に何かが入ってきた。
彼女がいつのまにか僕たちの前に移動していた。こちらをしっかり見て言ってくる。
チェリケー:「無視はだめですよぉ〜、まだ自己紹介終わってません!」
トンガリ:「はいはい・・・、それで?」
自己紹介は名前だけでいいんじゃないかと思いながら聞きかえしてみる。
チェリケー:「私が何者か知りたくないんですか!?」
トンガリ&シャウト:「別に・・・で?」
前に向かって歩き出そうとしていた彼と一緒に二人で口を合わせ言う。
少しきつめに言ったかも知れないがこちらも急いでいる。
チェリケー:「あぁぁぁ〜!トンガリさんっ、私はあなたが何者か知っているんですよ!!!」
僕が何者か知っている?僕はそんな人間じゃ・・・、だが次の言葉を聞いて僕は驚愕した。
チェリケー:「剣士リガールの一人息子、トンガリ。それは貴方ですね?」
沈黙した・・・・、僕の父さんを知っているとしても僕の存在まで知っている人はもういないはず。
そんな中、シャウトが口を開いた。
シャウト:「・・・で、大蜘蛛はどこいったんだ?」
トンガリ:「だぁぁぁぁぁ!お前は黙ってろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
僕は渾身の力でシャウトを吹き飛ばした・・・



第三十一章へと続く・・・



RETURN