第三十一章  「発見」





 何はともあれ?そのチェリケーとかいう女は僕のことを知っているようだった。
 (こんな無名な奴を探しに来たってなると何か用事でもあるのか?)
おっと、こんなことを考えてる暇は無いんだった。ここに来たのはギルロイ探索のため。
さっきの大蜘蛛のような魔物に彼一人で出くわしたら、いくら彼が薨神館流の師範でさえ
ひとたまりも無いはずだ。探索しに来たのというのに、当の本人に死なれては何か嫌だ。
どうせなら生きた彼を街へ連れ戻したい。
 ………ということで
トンガリ:「え〜と、チェリケーさん?今人探しで忙しいんです。んじゃ。」
チェリケー「ちょっと、待ってください!」
 ぐいっと服をひっぱられ一瞬脱力する。が、踏み出す足に力を入れる。彼女の掴んでいる
手が僕の服から離れる。その隙に全力で走り出す。今はこんなのに構ってる場合じゃない。
走りながら後ろを振り返ると、彼女も後ろから付いてきているようだった。仕方ないか、と
割り切ってまた走り出した。
 このグリンネル洞窟はとにかく分かれ道が多い。来た道を覚えていないと迷子にでもなっ
てしまいそうなくらいに。その道を人の気配がする方へと進んでいく。何度かの岐路の後、
人影を見つけた。長い朱色の槍、バーミリオンスターを持っている戦士だ。僕はその戦士を
ギルロイと確信し近づいた。
 みるとギルロイは傷だらけだった。朱色の長槍を杖代わりにして立っている。何故ここま
でして彼がこの洞窟に潜入したのかは分からないが、いくら理由があったとしても……ここ
までしてすることがあるのだろうか。彼が僕の視線に気づいたのか、ゆっくりとその体をこ
ちらに方向転換する。同時に、後ろからチェリケーが追いついてきたところだった。
ギルロイ:「君達はこの洞窟へ何用だ?用がないなら早く引き返したほうがいい。」
 よく、そんな体で人のことを心配できるものだ。心中でそんなことを思いながら僕は口を
開いた。
トンガリ:「引き返したほうがいいのはアナタでしょ!んな傷だらけでこの洞窟にいたら間
違いなく魔物に殺されますよ!」
 忠告というより、警告。ここまできて彼に死なれたら何か後味が悪くなる。
 彼は、僕の言葉を聞いてふっと息を漏らすと、また歩き始めた。槍を杖にして………
トンガリ:「シャウト!!!」
 そう呼んだ瞬間に後ろから魔法使い、シャウトが出現する。
シャウト:「んぁぁ、呼んだかぁ?」
 彼を呼んだのには理由があった。まぁ理由なしで人を呼ぶ奴もいないと思うが。それを彼
に伝えようとしたとき。
チェリケー:「私、治療術なら少しは使えますよぉ。ほら、えぃ!」
 ギルロイが赤色の光に包まれる。そして小規模な爆発が起きる。そしてその煙の中から先
程よりさらにボロボロになったギルロイが出現する。……無事かな。少し心配になった。彼
女の声が、また洞窟に響く。
チェリケー:「えへへ、失敗失敗♪ えいっ!」
 今度は成功したようだ。彼女の掛け声と共に淡い緑の光がギルロイを包みこんだ。光が止
むと怪我が治った(完全ではなかったが)彼が出現する。同時にチェリケーの歓喜の声が聞こ
えてくる。
 さて、彼の怪我も治ったし?僕はシャウトに命令を下した。小声で。
トンガリ:「(シャウト、彼このままここにいたら死んじゃいそうだし。帰ってても聞いてく
れそうにないから、ここは一つお前に頼むよ」
シャウト:「(はっ?出口までふっとばすのか?」
 怪訝そうな顔つきでシャウト。
トンガリ:「(じゃ〜な〜く〜て〜。転移させるんだよ。」
シャウト:「(了解!」
 一呼吸置いて、シャウトがギルロイに対して魔法をかけた。ギルロイがまばゆい光に包まれ
る。一瞬後、ギルロイの姿はそこには無かった。
チェリケー:「え〜と質問していいですかぁ?」
トンガリ:「どうぞ、」
チェリケー:「彼、どこにぃ行ったんですかぁ?」
 当たり前の質問……だと思う。彼女の問いにシャウトが答える。
シャウト:「てへっ♪」
トンガリ:「てへっ……って」
シャウト:「じゃぁ、あはっ♪」
チェリケー:「どこにいったかわからないんですねぇ^^」
 それでいいのかよ!責任問題だぞ?おい。こいつら、まともじゃぁないのか?
 僕は解決法を(街の人に対する言い訳)考えることにした・・・



第三十二章へと続く・・・



RETURN