何はともあれ?そのチェリケーとかいう女は僕のことを知っているようだった。 (こんな無名な奴を探しに来たってなると何か用事でもあるのか?) おっと、こんなことを考えてる暇は無いんだった。ここに来たのはギルロイ探索のため。 さっきの大蜘蛛のような魔物に彼一人で出くわしたら、いくら彼が薨神館流の師範でさえ ひとたまりも無いはずだ。探索しに来たのというのに、当の本人に死なれては何か嫌だ。 どうせなら生きた彼を街へ連れ戻したい。 ………ということで トンガリ:「え〜と、チェリケーさん?今人探しで忙しいんです。んじゃ。」 チェリケー「ちょっと、待ってください!」 ぐいっと服をひっぱられ一瞬脱力する。が、踏み出す足に力を入れる。彼女の掴んでいる 手が僕の服から離れる。その隙に全力で走り出す。今はこんなのに構ってる場合じゃない。 走りながら後ろを振り返ると、彼女も後ろから付いてきているようだった。仕方ないか、と 割り切ってまた走り出した。 このグリンネル洞窟はとにかく分かれ道が多い。来た道を覚えていないと迷子にでもなっ てしまいそうなくらいに。その道を人の気配がする方へと進んでいく。何度かの岐路の後、 人影を見つけた。長い朱色の槍、バーミリオンスターを持っている戦士だ。僕はその戦士を ギルロイと確信し近づいた。 みるとギルロイは傷だらけだった。朱色の長槍を杖代わりにして立っている。何故ここま でして彼がこの洞窟に潜入したのかは分からないが、いくら理由があったとしても……ここ までしてすることがあるのだろうか。彼が僕の視線に気づいたのか、ゆっくりとその体をこ ちらに方向転換する。同時に、後ろからチェリケーが追いついてきたところだった。 ギルロイ:「君達はこの洞窟へ何用だ?用がないなら早く引き返したほうがいい。」 よく、そんな体で人のことを心配できるものだ。心中でそんなことを思いながら僕は口を 開いた。 トンガリ:「引き返したほうがいいのはアナタでしょ!んな傷だらけでこの洞窟にいたら間 違いなく魔物に殺されますよ!」 忠告というより、警告。ここまできて彼に死なれたら何か後味が悪くなる。 彼は、僕の言葉を聞いてふっと息を漏らすと、また歩き始めた。槍を杖にして……… トンガリ:「シャウト!!!」 そう呼んだ瞬間に後ろから魔法使い、シャウトが出現する。 シャウト:「んぁぁ、呼んだかぁ?」 彼を呼んだのには理由があった。まぁ理由なしで人を呼ぶ奴もいないと思うが。それを彼 に伝えようとしたとき。 チェリケー:「私、治療術なら少しは使えますよぉ。ほら、えぃ!」 ギルロイが赤色の光に包まれる。そして小規模な爆発が起きる。そしてその煙の中から先 程よりさらにボロボロになったギルロイが出現する。……無事かな。少し心配になった。彼 女の声が、また洞窟に響く。 チェリケー:「えへへ、失敗失敗♪ えいっ!」 今度は成功したようだ。彼女の掛け声と共に淡い緑の光がギルロイを包みこんだ。光が止 むと怪我が治った(完全ではなかったが)彼が出現する。同時にチェリケーの歓喜の声が聞こ えてくる。 さて、彼の怪我も治ったし?僕はシャウトに命令を下した。小声で。 トンガリ:「(シャウト、彼このままここにいたら死んじゃいそうだし。帰ってても聞いてく れそうにないから、ここは一つお前に頼むよ」 シャウト:「(はっ?出口までふっとばすのか?」 怪訝そうな顔つきでシャウト。 トンガリ:「(じゃ〜な〜く〜て〜。転移させるんだよ。」 シャウト:「(了解!」 一呼吸置いて、シャウトがギルロイに対して魔法をかけた。ギルロイがまばゆい光に包まれ る。一瞬後、ギルロイの姿はそこには無かった。 チェリケー:「え〜と質問していいですかぁ?」 トンガリ:「どうぞ、」 チェリケー:「彼、どこにぃ行ったんですかぁ?」 当たり前の質問……だと思う。彼女の問いにシャウトが答える。 シャウト:「てへっ♪」 トンガリ:「てへっ……って」 シャウト:「じゃぁ、あはっ♪」 チェリケー:「どこにいったかわからないんですねぇ^^」 それでいいのかよ!責任問題だぞ?おい。こいつら、まともじゃぁないのか? 僕は解決法を(街の人に対する言い訳)考えることにした・・・ 第三十二章へと続く・・・ |