第三十二章  「探索終了」





 ギルロイを無事に見つけることはできたが、彼を連れ帰ることと、何故闇エルフ達との
争いに巻き込まれ、そしてあの洞窟にいたのかは聞くことができなかった。連れ帰ること
は無理やりにでも引っ張って帰れば良かったのだろうが、もしそうしたとしても、彼の意
思を止めることはできなかっただろう。単独でその上、満身創痍の状態で洞窟にいた自体、
何か覚悟はできていたはずだ。
 もし仮に、シャウトが魔法で転移させなかったら、あのまま洞窟最深部へと進んでいっ
て魔物に殺されていたかもしれない。あれで良かったんだ、あれで……、魔物に殺される
くらいなら何処かの地に飛んだほうがな………(自分に言い聞かせる)
 今回の依頼内容は「ギルロイの安否を確認してほしい。」だったが、僕達の目的は町の
人間の信頼を取り戻すこと。依頼主のダニエル爺も、変な噂流しやがって、ほぼ強制じゃ
ねぇかよ……、この依頼。しかもこの結果じゃ依頼失敗になるのかな?ふぅ、大蜘蛛に喰
われそうになったりしたってんだから骨折り損にはならないでほしいな。まぁ、無事は確
認できたんだし、一応。(あの後どうなったかは責任持たず)分かってくれるよな、依頼主
も。
 洞窟の外は朝になっていたので、入ってからかなりの時間が経っているらしい。少なく
とも夕暮れ頃に入って、朝になったのだからかなりの時間だ。時間のかかった要因は間違
いなく道に迷ったから。初めの内はシャウトにメモを取らせながら歩いていたが、僕がギ
ルロイの気配を察知し走り出してからは闇雲に走ったので全く道が分からなくなってしま
った。シャウトに、転移の魔法で洞窟の外へ飛ばしてくれとは頼んだのだが、あの魔法は
かなり疲れるらしい、一日に数回も使えないそうだ。なのでシャウトは………
トンガリ:「おぃこら、シャウト!皆、眠いんだ!!一人だけ寝ることは許さん!!!」
シャウト:「あぁ!?誰の御蔭で依頼が成功したと思ってんだ?あぁ眠い眠い……」
トンガリ:「っっ!まだ成功したとは分からねぇんだからな!」
シャウト:「あぁぁあぁぁっぁ!!!!!うるせぇぇえぇ!!!!!!!やはりお前とは一回決着をつ
けたほうがよさそうだなぁ!!!!!?」
 そんな激論が行われている頃、チェリケーが何やらいいたそうにこちらを見ていた。そ
れに気づいて僕が声をあげる。
チェリケー:「あんまり依頼の内容はそのぉ、え〜とぉ。わからないですけどぉ。ギルロ
イさんの安否は確認できたのだし、早速報告しにいったらどうですぅ?」
 まぁ、もっともな意見だ。僕は適当にシャウトを宥めると、セルミナへの道を歩き出し
た。シャウトよりはこの人、役立つかもなぁ………
チェリケー:「トンガリさんっ!」
 おわっ!!!!!!急に大声だすなよ驚くなぁ。何だよ。それ何?
 見ると彼女が、かなりの大きさの草を持っていた。何処にあったのかは知らないが、さ
っきまで、持っていなかったところを見ると、そこら辺に落ちていたのかもしれない。
チェリケー:「トンガリさん、こっちこっちぃ♪」
 彼女がこちらに、手を上下させてこいこいをしている。彼女に言われたとおり彼女の元
へ向かいにその場に腰を下ろす。
トンガリ:「この草がどうしたんですか?」
 彼女は僕の答えに信じられないのか、目を丸くして言ってきた。
チェリケー:「知らないんですか!?この薬草の名前は〜………」
 相当有名な薬草なのか、彼女が当たり前のように続けた。
チェリケー:「《ウソクヤノール》っていう超有名かつ伝説的な万能薬草ですよぉ!!!!塗
るものによって味が変わるとかいう伝説もあるんですよ!!!!!!」
 うそくやのーる……?何か変な名前だなぁ。
チェリケー:「こんな薬草を見つけるなんて運がいいな、私♪」
 何やらそのウソクヤノールとかいう薬草をまた探そうとしている彼女をみて何となく嘆息
し空を見上げる。はぁぁぁ、早く今日、終わらないかなぁ。
 当然だが、まだ日は暮れそうになかった……



第三十三章へと続く・・・



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