第三十三章  「新たに浮かぶ事象」





 色々あったがようやくダニエル爺に報告しにいけそうだ。たがが人探しにこんなに時間
がかかったのは、おそらくこの二人のせいだろう。この二人なしで(チェリケーさんは途中
から加わったが)やれば相当に時間を短縮できただろう。まぁ、一人でやると大変な事が多
々あるのでデメリット覚悟でやったんだがなぁ。こりゃ時間かかり過ぎたな………
 ギルロイを見つけて、何処かへ吹っ飛ばしたこと、どうっすかな。はぁ、ダニエルさん
になんて言おうかな。「もう魔物に喰われていました」なんて言っても信じてもらえない
だろうし、何か少なくともギルロイを見つけたっていう証拠貰ってくれば良かったなぁ。
例えば、バーミリオンスターの先っちょとか。う〜ん、洞窟に引き返してみたら何かギル
ロイのもの落ちてるかもしれないな。ここは、皆に意見を聞いてみるか。まだ眠そうにと
ぼとぼと歩いているシャウトに呼びかける。
シャウト:「魔物に喰わ……」
トンガリ:「いやもういい……」
 ま、まぁこいつに期待してはならないことは分かりきっていたことだ。次は少しは期待
できるチェリケーさんに………
チェリケー:「う〜ん、色々考えたんですがぁ…。え〜と、洞窟の壁を抜けて何処か」
トンガリ:「ギルロイは幽霊じゃないんだよ……」
チェリケー:「関係ないですぅ。あの洞窟の壁に幾多もの冒険者が消えていったという伝
説があるんですよ!!!!!」
 なんだよその伝説………。少しでもこいつらに期待した僕が馬鹿だったか。ま、少しは
参考にするか。
 気がつくと、セルミナ草原についていた。あと数十分もしない内にセルミナにつくだろ
う。報告(言い訳)の内容を考えながら僕は一歩一歩確実にセルミナに近づいていた………
ダニエル:「……で、ギルロイはどうだったのですか!?」
トンガリ:「え〜、魔物に喰われ……いや、洞窟の壁に消え……いや、その………」
 なかなか言葉が上手く纏まらない。後ろの方を見るとシャウトとチェリケーがなにやら
トランプをだしてポーカーをしている。ポーカーだと分かったのは、シャウトが「ストレ
ート・フラーッシュ!!」とかいっていたので何となくそう思ったから。こいつら人任せに
しやがって、くぅ……。そんな中、(おそらく)負け続きのチェリケーがこちらに向かって
きた。
チェリケー:「あぁぁぁ、トンガリさんっ!急いで下さいよぉ〜。もぅ、トンガリさんが
言わないなら、あたしが言いますよぉ!」
 ちょ、ちょっと待て。アンタが何を言う気だぁ!!!?そしてチェリケーの口が開かれた。
チェリケー:「私達、トンガリ一行(?)はギルロイの探索開始3時間後、傷だらけの彼を発
見するが、捕縛することは彼の強い希望により実行することはできなかった。」
 おぉ、できるじゃないか、チェリケーさん!いつもの口調とは違う彼女の口調に驚かさ
れたが、次に発せられた言葉遣いは違った……
チェリケー:「あはっ♪あの人はこの後ろにいるぅシャウトさんがですねぇ。何処かに飛
ばしちゃったんですけどねぇ〜^^」
 ぐはぁ……、今までの雰囲気が台無しっしょ。ダ、ダニエルさんの返答は……!??
ダニエル:「そうでしたか。」
 いいのかよ!はぁぁぁ、何か調子狂うなぁ。
ダニエル:「一つ、頼みができました。」
 頼み……?ギルロイを探して来いとかいうんじゃ……?
ダニエル:「ギルロイは傷だらけだったといったね。おそらく、それは闇エルフに襲われた
と思われる。ギルロイはカタストロフィアのことを知っていた。その矢先に彼は狙われた。
つまり、『カタストロフィア』とは普通におきる自然現象ではなく、何らかの悪意ある意思
が絡んでいるのではないかと思われる。」
 カタストロフィア、究極的な大災害か……、このティアに住む全ての者に影響を与える。
ヒト、エルフ、魔物、植物さえも、その事象は巻き込む………
 さらに彼は続けた。
ダニエル:「ギルロイが襲われたことで、逆に神官長ノーバ様のお考えが正しかったことが
わかる。多くの冒険者が『カタストロフィア』の核心に」迫ることを阻止しようとする存在
がいるということだ。その理由を突き止めることが、おそらく、『カタストロフィア』を回
避し、ティアの世界を救う手段を見出すことに繋がると私は思っている。
 ギルロイが闇エルフに襲われた……?しかもその理由がカタストロフィアだと……?どう
いうことなんだ、わからない。ダニエルはさらに続けた。不安と期待を込めた顔持ちで……
ダニエル:「闇エルフの統率者を倒してほしい。ギルロイの友人で、闇エルフの動向に詳し
いレンジャーがガルフネット家に滞在することがあるはずだ。彼の話を聞くがいい。」
トンガリ:「わかりました……、いくぞ、お前ら。」
 後ろからダニエルが言ってきた。そのなかには僕達への希望が込められている。
ダニエル:「無理強いはしない。なぜなら深入りすれば、あなた方が殺されるかもしれない
からだ。行くなら十分に準備をつんだ後、行ったほうがいい。気をつけてくれ。」
 ダニエルを背にして僕は歩き出した。冒険者狩りだと、そんなことこの僕が許すかよ。絶
対に終わらせてやる。そんなことは……



第三十四章へと続く・・・



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