ガルフネットの家に宿泊したその夜、僕はチェリケーに起こされた。 チェリケー:「トンガリさんに、話しておくことがあります……」 な、なんだよ。畏まっちゃって…。う〜ん、何だろ。「トイレに怖くて行けないからつ いてきて」とかじゃない…よなぁ。 トンガリ:「え、あ、はい。何ですか?」 彼女は辺りを見回してから言った。 チェリケー:「ちょっと、ここでは……、外で話します。」 おぃおぃ、何か怪しいことしようっていうんじゃ……、そんなことを思いながら僕は、彼 女について外へ出た。 屋敷の外は真っ暗だった。まぁ、月が出ているのでそう真っ暗という訳ではないが。 さて、用件は何かな… トンガリ:「……で、何ですか?」 チェリケー:「私は、トンガリさんに会ったとき、あなたを探していたといいましたよね?」 え〜と、グリンネル洞窟で会った時かぁ……。何か僕のことを知っているとか言ってい たな。まぁ、探していたとは言ってなかったけど、そういうことでいいか…… チェリケー:「大剣士リガール息子であるトンガリさん。伝えることがあります。」 そういえば、この人、父さんのこと知っているとか言っていたな。父さんのことか。今 後の旅の為にも聞いておいて損はないな。 トンガリ:「父さんのことを知っているなら教えてください。ルーインの破壊される前で も、その後のことでも…」 彼女は、にこっと笑って僕の問いに答えた。 チェリケー:「無論、そのつもりですよ。私が知っている彼の情報を全て御教えします。 あなたにはそれを知る権利があるんですから。今から話すことは、私達が見た彼の最期の 姿です。これは、これから行こうとしている、悪霊の森での出来事です。」 普通の森とは違ってあの森は薄暗かったです。普通の森でも薄暗い森はあるのでしょうが それらと決定的に違っていたもの。森自体の空気、空気が今まで行ったことのあるどんな 森よりも、邪悪に満ちていました。生物の気配が全くせず、森の木々にも生気が感じられ なかった…… あの日、リガールさんは私ともう一人のあの人を連れてあの森、悪霊の森へと入った。 リガールさんは何の目的でこの森に入ったのかは最後まで教えてくれなかった。ただ一言 だけ「今から見る景色を目に焼き付けておけ」とだけしか言わなった。 私が変に思ったところは、彼は重要な依頼はいつも私達を連れず、独りでこなしていま した。でも今回は彼が私達を連れて行く…。目に焼き付けておけというくらい重要な依頼 なら独りで行うはずなのに……。そのときの私達は自分の力を認めてくれたのだと思って いました。 彼は大陸でも最強の部類に入る剣士ですが、その力を理由もなく使う人間ではない。彼 は誰かにただ何かを頼まれてだけだったのか。それとも彼に別に何か目的があったのか… 彼の運命を変えたこの出来事をリガールの弟子としてあなたに伝えます…… 僕は彼女の口から父、リガールがルーインを出た後、何をしていたのかを知ることにな る…… 第三十六章へと続く・・・ |