チェリケー、彼女の語りが終わったようだった。確認するように僕が口を開く。 「はい、私が知っているのはここまでです。」 「その後のことは……?」 「そのあと彼がどうなったのかは知りません。いくら彼が大陸有数の大剣士だったとしても、 あれだけの数相手に勝てたのか………。」 チェリケーは僕の旅の目的を確認するかのように呟く。 「貴方はそのことをを知る為に旅をしている……」 そして彼女は顎に人差し指をあて何かを考えるような仕草をとった。少しの沈黙が訪れるが すぐに彼女が喋りだす。 「……過去、私達が貴方のお父さん、リガールさんと行った悪霊の森へ行くことで何かが分か るかもしれません。」 父さん……死んだのか?僕は……… 父の所存を知るのが旅の目的、か。 「わかりました、予定通り行って父の跡を確認してきます」 彼女は不安、心配の表情を浮かべていて言った。 「気をつけて下さい。数年前より確実に闇エルフの冒険者狩りは発達してきています」 ……少し気になになり聞いてみる。心配の表情……? 「チェリケーさんはついてきてくれないんですか?」 彼女の顔がより一層、心配そうな顔をする。 「すみません、私はリガールさんを探して貴方とは別に旅を続けるつもりです……。またどこ かで貴方と会える日を楽しみにしていますよ」 「…じゃ、そっちも気をつけて」 一拍置いて最後に彼女らしい口調で別れを告げられる。 「それじゃぁ、また会いましょうねぇ〜」 辺境の大地の奥へ消えていく彼女を見ながら、僕は今の話を整理しだした…… 二十歳はいっているだろう、彼女が十歳頃の話だ。ルーインに《アイツ》が襲ってきてのが 五年前。父さん達が森へ行ったというのは少なくとも五年前よりはもっと前だろう。 ここで僕の頭に二つの疑問が浮かんだ。自分の知っている事と彼女の話の疑問点。 一つ。 これは父さんが、国から魔物退治の依頼を受けた。と言ってルーインをでた時期と重なる。 悪霊の森に何か魔物が棲んでいた。それを父さんに国が退治するよう依頼した……か。 ここで少し奇妙な点が浮かぶ。国には軍隊がある。わざわざ辺境の町に住んでいる父さんに 依頼しなくても軍を使えば良かったんじゃないか?父さんには及ばないだろうが、軍の中には 優秀な戦士がいくらでもいるはずだ。何故、わざわざ父さんに……。 他に考えられるのが、父さんは国に依頼などされずに単独で悪霊の森へ行き魔物を退治しよ うとした。こうなると僕に嘘をついてまで、それを行なったことになる。そこまでした理由が 今度はわからなくなる…… 二つ。 父さんとあの森へ行った人たち。弟子二人。 一人はチェリケーさん。これはいい。疑問はもう一人の銀髪の剣士……。彼の名前を聞いて いない。彼女はただ言い忘れただけなのか、それとも何か別に理由があって僕に伝えたくなか ったのか。 そして、その人は今何処で何をしているのか。彼女と同じように父を探しているのか…… 話を整理してみると疑問だらけだ。まだ彼女に色々聞く必要がある。 僕はもう闇夜で見えなくなりかけている彼女の方へ走った……… 第三十八章へと続く・・・ |