「おりゃぁぁっぁ!!!!!!」 「甘いのじゃよ、それでもリガールの息子か?」 はぁはぁ……何者だこの爺さん。僕の本気の攻撃をあぁ何回も避けやがって。しかも父 さんと親しかったのか、何かそれっぽく呼んでいるように聞こえるけど。 僕は攻撃の手を止めて、そのことを爺さんに聞いてみる。 「爺さん」 「ベンゼンじゃ。馬鹿者」 「じゃぁ、ベンゼン爺」 「まぁ、いいじゃろう」 「父さんとアンタはどういう関係だ?」 ベンゼンがいかにも奇妙な質問を聞いたような顔をする。少しの間が空いた後、返答し てくる。 「……ワシはギャルが好きなのじゃが」 「例えば?」 「チェリちゃんのような可愛い娘っ子が好きなのじゃよ」 「あっぁぁぁぁ……何で僕はのってるんだよ。爺さん、そうじゃなくてな。友人関係って か、そういうことを聞いてるんだよ」 次に、爺さんはやっと何かを理解したような顔で答え始める。 「あぁ、リガールか?奴はなかなかの男じゃったよ?」 「は?」 「ワシの弟子じゃ」 「!!!!!」 ベンゼンの口から信じられない言葉を聞いて、僕は飛びのく。 弟子……!!?父さんの腕前って一人で鍛錬して見についたものじゃなかったってか。第一 なんでこんな爺さんが師匠なんだよ。もっと優秀な人がぁ…… ん?背後に気配を感じた。阿呆なオーラを放つ者の気配を。だが今は忙しいのででも気 にしないでおく。 うむぅ、弟子っていうことは何か知っているかもしれない。 「爺さん」 「ベンゼンじゃといっておるじゃろ!」 「ベンゼン爺、父さんの所存しりませんか?」 「リガールならてっきり見なくなったのぅ」 「チェリケーさんは森に行って後から一切見ていないそうです」 「森……、悪霊の森か!!?」 爺さんが真面目な表情になる。何か不安な理由でもあるのだろうか。 たかが森だろ?チェリケーさん達だって戻ってこれたんだし。 だが、ベンゼンは突如、声を張り上げた。 「あの森に単独で入ったのか、リガールは!」 怒り。心配の中にそれが籠っていた。師として弟子を敬う気持ち。 あの森はそれだけ危険だというのか、外見からは普通の森にしか見えないというのに。 「ワシは今から悪霊の森へ行ってくる」 「じ、爺さん!何考えてんだ!? それに、これは数年前の話だ」 「あの森に入った者は永遠に出られないのじゃ……たとえ死んだとしてもな」 彼の言うことを僕は理解できなかった。 死んでも永遠に出られない…? どういうことだ? ベンゼンが説明を始める。あの森がどうして悪霊の森とまで呼ばれる由縁を。 「あの森に入った生物は死ねないのじゃ。生きている者は歳をとれない、だが怪我などに よって死んだ者は魂のみで生き続けることになる。成仏することなくな……」 「じ、じゃぁ、爺さん……、父さんは……」 「……おそらくお前の思っている通りじゃよ」 僕の思っている通り…… あの時、父さんが死んでいたにしろ生きていたにしろ、あの森の何処かにいるというこ とだ。死んでいた場合、父さんの肉体は滅んで魂のみになっている。もし生きていた場合、 父さんはあの時の、ルーインを出て行った当時の姿で肉体を持って生きている。 もし、生きているのだとしたら…… 僕の決心は固まった。 まずは、ガルフネット家にいるレンジャーに森への入り方を教えてもらわなくてはなら ない。 朝日が眩しかった。早く戻らないとガルフネットに怪しまれるかもしれない。 「トンガリ」 爺さんが僕の名前を始めて呼んだ。まぁ、さっき会ったばかりなので当たり前なのかも しれないが。 「ワシは先に森へ行ってくる……、また会おうぞ、リガール’sチルドレン」 「何がチルドレンだよ!ま、気をつけてな、爺さん」 「ベンゼンじゃって!」 そう最後に彼は言うと森の方へと歩き出した。 僕はそれをある程度見送ると、ガルフネット家へ向かって引き返した。 余談だがあの後、気配のした後ろを見てみても誰もいなかった…… 特別編へと続く・・・ |